この連載は、1年間という長期のパパ育休を取った著者が、
「育休を取って良かったと感じる事」にフォーカスして体験談を語っていく企画です。
早くも第3回となる今回は、そんな「男性が育休を取ることのメリット」のひとつとして、「家庭内の意思決定がスムーズになる」という話をお伝えします。
育児は情報処理の連続である
子どもが生まれる前は、「育児は赤ちゃんのお世話がメイン」という漠然としたイメージを持っていました。もちろん実際のお世話も大変ですが、それと同じくらい大変なのが「情報処理」の作業です。
具体的に言えば、育児には考えたり覚えたりしなくてはならないことが大量にあります。
たとえば、赤ちゃんが生まれてからすぐ始まる予防接種や定期検診のスケジュール管理。
日程を調整し、予約を取るだけでも結構な手間です。
さらに、自治体ごとの手続きや申請、出生届や児童手当の書類提出など、行政手続きも意外と煩雑なものです。
その他にも、ミルクや離乳食の管理、オムツやベビー用品の買い出し、保育園のリサーチや見学予約、日々の家事、子どもに関する小さなトラブルへの対応など、思った以上に考えることや決定事項が多いことに驚きました。
こうした情報を処理し、日々意思決定を重ねていく作業が育児の本質だと感じるようになりました。
ふたりが同時に育休を取ると何が起きるか
私は1年間の育休を取得しましたが、その間、パートナーも同じく育休を取得していました。
この「夫婦ふたりが同時に育休を取る」というのが、今回のポイントです。
ふたりが同時に家にいて、一緒に赤ちゃんの育児に取り組むことで、家庭内で共有される情報が劇的に増えます。
お互いに状況を常に共有しているため、「情報伝達のコスト」が激減するのです。
例として、保育園探しの意思決定プロセスを例に挙げてみます。
ひとりで保育園選びをするときの難しさ
もし片方だけが育休を取っている場合、保育園選びは以下のような流れになることが一般的です。
- インターネットや口コミで保育園をリサーチする
- どこまでなら通えそうかなど、一旦パートナーと相談する
- 見学する保育園を絞り込み、予約をする
- 見学予約をして実際に足を運ぶ
- 見学の感想やポイントをパートナーに伝える
- ここまでを繰り返し、最終的に応募する保育園を決める
一見シンプルに見えるこの流れですが、実際に行ってみると、とても負担が大きいことがわかります。
実際リサーチだけでも膨大ですし、実際赤ちゃんを連れて1人で保育園に足を運ぶ負担もかなりのものです。
特に面倒なのが「実際に見学に行った人が、行っていないパートナーに見学時の感想や現場の空気感を正しく伝える」という作業です。
文字や言葉で正確に伝えるのはとても難しく、どうしても誤解が生じたり、言葉足らずで意図が伝わらないこともあります。そうすると、感情的なすれ違いが起きてしまうことも珍しくありません。
実際に私の知り合いの中には、「自分が一生懸命見学してきた保育園について伝えたのに、パートナーから的外れな意見が返ってきてケンカになった」と話している夫婦もいました。
これはもちろん、見学に行ってない側からしても大変なことで、実物を知らないのに言葉の情報だけで的を得た意見を言うのはとても難しいです。
なので、どちらも悪くないのに非効率で感情的な議論になってしまう可能性があります。
夫婦ふたりで育休を取るとどう変わるのか?
一方、夫婦が同時に育休を取っている場合、保育園選びの流れはこう変わります。
- お互いに保育園をリサーチし、候補を絞り込む(手分けして効率化)
- 二人で行ける日程を調整し、見学予約を取る
- 見学当日、一緒に足を運び、現地の雰囲気や環境をその場で共有する(赤ちゃんは交代で抱っこ)
- 見学後に感じたことを、その場ですぐに話し合う(情報伝達コストゼロ)
- ここまでを繰り返しつつ、自分たちの基準を揃えて行く
- その基準を元に応募する保育園が自然に決まり、ストレスなく最終決定できる
こうすることで、情報伝達のコストが大幅に削減され、ストレスなく迅速な決定ができます。細かいニュアンスや空気感などは、実際に現場を見ていないとわからないことも多いもの。それをふたりが共有することによって、的確な決定を下すことができます。
家庭内の情報伝達コストは想像以上に高い
会社では、情報共有の効率性が非常に重視されます。
家庭も同じで、情報共有がうまくいかないと、育児に関する決定だけでなく、夫婦の感情的なすれ違いやストレスの原因になってしまいます。
育休を夫婦で同時に取ることで、この情報伝達コストが大幅に軽減されます。
子育ての細かな判断は日々無数にあり、それぞれが自分なりの判断基準を持っていますが、ふたりが同じ状況を見ていることで、その判断基準が自然と共有されます。
結果として、夫婦が衝突することが少なくなり、お互いの理解や共感が深まります。育児という日々の連続した意思決定の中で、夫婦が自然に同じ方向を向いていくのです。
ふたりで育休を取ったからこそ、気づけたこと
1年間の男性育休を取得し、私が最も実感したのがこのポイントでした。単に育児の負担が軽減されるだけでなく、夫婦のコミュニケーションコストが大幅に下がり、家庭が円滑になるというメリットです。
これは短期間の休暇では得られない、長期間、ふたりが家庭にいるからこそ得られる大きなメリットだと思います。
育児はひとりでもできますが、ふたりが協力して行うことで、はるかに効率的に、かつ精神的に安定して行えるようになります。夫婦が一緒に考え、情報を共有し、意思決定をスムーズに行うことができるというのは、家族にとって非常に価値のあることです。
それではまた次回もお会いしましょう!